戦前に流行していた皇国史観とはまったく異なるマルクス主義が、なぜ日本人の間にそれほど流行したのだろうか。この変化の要因は何だろうか。

戦時中における抑圧に対する反動が、最も分かりやすい説明でしょう。重要なことは学問の世界、学者の世界に止まらず、「下からの発展」を目指したマルスク主義的な見方が、社会に広汎に共有されていたということです。権利を再獲得した労働組合も盛んに活動していましたし、そうした社会の動きに根差した地域の文化活動、サークル活動も極めて活発でした。60年安保で激化する学生運動も、当初は一般市民の理解を得ており、かなりの応援があったのです。彼らが支持を失うのは、警察が学生/市民の乖離を狙った結果、暴力化・セクト化が進んでゆくためです。共産党を忌避するような考え方は、このとき以降政治的に「創られて」ゆくものなので、注意が必要です。