経済というものはそれ自体で存在するものではなく、人間あるいは社会が様々に関係を持つことによって成り立っていると私には思えます。つまり、経済は人間・社会の意志によって成り立っているものといえると思います。なぜマルクスは、人間が自分の意志で政治・経済を動かしているという現代の考えを否定し、人間によって成り立つ経済を下部構造に置き、それが観念などを規定すると考えたのか不思議です。

一般的には、人間が自由に経済を作るとみられているかもしれませんが、学問の世界では、そうは考えられていません。とくに社会科学においては、人間は社会によって規定された存在と捉えるのが普通です。昨今では、グローバリズムに便乗して利益追求を図るモンサントなどのバイオ企業を、「新しい帝国」とする見方もあり、国家権力とは異なる目にみえないより強力な力が、我々を根底から束縛しているとする議論が強くなっています。そうした見方の起源のひとつがマルクス主義であることは確かで、「人間の自由」を無条件に肯定するのは楽観的に過ぎる、というのが社会科学の一般的見方でしょう。