下部構造が上部構造を規定するのは分かるが、上部構造は下部構造を規定することはないのだろうか?

それはありえます。マルクスはそのことも指摘しているのですが、図式的な説明では、どうしても下部構造規定説を強調し、こちらをより根底的なものと捉えているわけですね。政治/経済の相互構築は、現実的には認められ、例えば経済制度を構築してゆくのは政治ではないか、との批判も認められます。しかしマルクスの場合、経済制度を創出する政治のあり方も、その時代の根底的な下部構造に規定付けられていると考える。政治家のものの考え方、国家の集合意識自体が、多少の表層的な相互交渉はあるにしても、経済構造によって規定されているのだ、経済構造の問題がより根底的なのだというのが、マルクスの立場だといえます。