占いが外れたとき、占いを行う人々はどうするのか、あるいはどうなるのだろうか。

古代中国の文献以来、卜占に携わる官職の者が、その占断の結果について主君から叱責される、あるいは責任を問われそうになる事例は幾つか見受けられます。しかしまず考えておかねばならないのは、凶兆を指摘する占断には、必ず何らかの修祓、凶兆を除去するための祭儀・呪術が伴っていたであろうことです。卜占は危機を事前に回避するための警告であり、よってそもそも結果の当否を問われない場合も存在したのです。ちなみに、前2世紀・前漢の『二年律令』史律第3条には、「卜学童を試するは、能く史書三千字を諷書し、卜書三千字を誦し、六発卜ひて一以上中らば、乃ち卜と為ることを得、以て官佐と為す。其の能く三万以上を誦さば、以て卜上計六更と為す。欠くれば、修法を試み、六発卜ひて三以上中らば之に補す」とあります。卜官となるための教育を受け試験に臨んだものが、卜占を行って6回のうち1回的中させれば合格したというのは、そのあたりの事情とも関係がありそうです。なお、殷代の甲骨卜辞には、卜占の目的・占断・結果を網羅して記述してあるものがありますが、興味深いことに、神聖なはずの王が占断を誤ったとみられるものが度々確認できます。それらがあえて記されるのは、卜官=史官による直諫の原型ではないかとも考えられています。