遣唐使の停止によって、唐物は朝貢品ではなくなり、単なる輸入品として、市場に出回ったりはしなかったのでしょうか?

講義でも説明しましたが、朝貢品でなくとも、外国との交易品については、朝廷・官司が優先的に入手できる決まりになっています。市の機能について規定している関市令では、外国との交易について、官司が交易する前に私人が交易することを禁じています。そのうえで、官司が購入するもの以外は、市での交易を許可しているのです。奈良時代の「買新羅物解」という文書によれば、新羅使が持参した種々の物品のうち、主に香料、薬品、仏具などが、内蔵寮などの官司を介して、貴族の家々によって購入されている様子が分かります。恐らくは、まずは皇室が入用なものを押さえ、続いて官司が必要なものを購入し、その後有力貴族たちによる交易が許されたものと考えられます。その貴重さ・高価さ、需要の高さからいっても、大宰府周辺に居住するなど地理的優位性がない限り、中級以下の人々の手にはなかなか入らなかったでしょう。