トーテミズム研究では、複数の部族が併存する社会において、それぞれの部族アイデンティティを据える役割をトーテムが担うといわれるが、同一地域内に複数のトーテムがあるのだろうか。

中国西南少数民族には虎トーテム、モンゴルには狼トーテム、北方狩猟民には熊トーテムが散在しています。列島社会には、授業でもお話ししたとおりトーテムの痕跡が少ないのですが、よく指摘されるのは、ヤタガラスを祖神とするカモ氏、蛇神オホモノヌシを祀るミワ氏などですね。海人系氏族にはワニを祖神とするものがあり、大王家=天皇家にはその血が入っています。人名的には動植物に由来するものが多いので、元来はもっと多様なトーテムが存在した可能性がありますね。それがなぜなくなってしまったかは、授業でお話しすることにしましょう。