果実が再生の象徴だとすれば分かりやすいが、植物の部位ごとに伝承を分類することはできないだろうか?またその意味があるだろうか?

それは面白いだろうと思います。ぼくは以前、樹木が伐られることに何らかの抵抗を示す伝承を、列島のなかだけで450個ほど確認しました。ほとんどが、幹に切りつけると①血が出る、②いくら伐っても塞がってしまう、③異類が出現する、④伐った者が病気になる・死ぬ、といったものでしたが、なかには、枝降ろしをしただけで④に至る事例もありました。また、山から樹木を伐りだしてくるときに行う「トブサタテ」という儀礼は、樹木における生命の母体である切り株と、生命の伸びゆく先端である梢を、山の神に返却するというもの。一部の林業地帯や伝統的神社建築において、古代から現在に至るまで実施されています。これは、アニミズムの狩猟祭儀と比較するとほぼ同じ構造で、梢や株は動物の精霊(イヨマンテなどの場合は頭蓋骨に生殖器、特定の一部臓器)に相当し、幹は骨・毛皮・肉・血に当たることになります。樹木それぞれの部位に、人々がいかなる意味を付していたかが浮かび上がってくると思います。