月と兎も再生象徴として結びつくものと思いますが、日本の民話・伝承などでは、狐や狸が異類婚姻で多く語られている気がするものの、兎は少ないように思います。なぜ少ないのでしょうか?

月と兎の関係は、話しませんでしたっけ? いまちょうど論文を書いているのですが、質問のとおり、再生象徴として同じカテゴリーに入ります。兎は生殖能力が高いので、イースターのシンボルなどになる一方、性欲の象徴としても扱われてしまいます。列島社会の民話・伝承では、それほど出番が少ないわけではなく、概ね賢い存在として描かれます。月との関係で象徴的なのは『今昔物語集』巻5-13「三獣行菩薩道、兎焼身語」で、帝釈天の化身である老翁に食物を与えるため、自らの身体を焚き火で焼かせた兎が、月に置かれるという有名な物語です。直接的な典拠は玄奘撰『大唐西域記』巻7 波羅痆斯国/月兎ですが、広く康僧会撰『六度集経』巻3-21、『旧雑譬喩経』巻下45、『菩薩本縁経』巻下 兎品第6、『生経』巻4-31/仏説兎王経、『菩薩本生鬘論』巻2-6/兎王捨身供養梵志縁起、『一切智光明仙人慈心因縁不食肉経』、『撰集百縁経』巻4-38/兎焼身供養仙人縁、『雑宝蔵経』巻2-11/兎自焼身供養大仙縁などにみえます。しかし、民話には文化/野生の境界にいる動物がモチーフになりやすい(まさに狐や狸など)ので、野生で狩猟対象になる兎は、確かにそれらに比べれば、活躍の場は少ないかもしれません。