森林伐採が以前から大規模に行われていたとして、ならばなぜ日本人は、昔から自然と共生してきたという言説が生まれたのでしょうか。 / 日本人のなかに、「緑は美しいから守らなければいけない」との考えが共通認識となったのは、いつのことなのでしょうか。

王権の政治的権威、寺社の宗教的権威を保持するために、森林の美観を保持しようとする考えは、古代からありました。仏教のなかにも、生命圏平等主義的な考え方から、動植物の殺生を忌む発想が同時に存在しました。個人の発想では、江戸後期の安藤昌益、近代の南方熊楠田中正造らが存在しましたが、しかしそれはあくまで例外で、現代でいう環境保護の発想は、やはり戦後にならないと一般化はしませんでした。とくに「共生論」が盛んになったのは、バブル崩壊後の1990年代で、経済大国としてのプライドを失った日本が、欧米に比肩しうる材料を文化に求めた結果だと推測されます。この傾向は、歴史の歪曲・正当化という点も含め、現在の「自画自賛番組の垂れ流し」にも繋がってきます。