寒冷化や耕地拡大のために木を伐ったとのことでしたが、世界的にも同じ傾向があるのでしょうか?

例えばヨーロッパなどでは、森林は産業革命期と比較すれば、現在のほうが保護されて回復しています。ヨーロッパは、古代文明の起こった地中海の周辺で早くから森林伐採が進み、もともと森林のまばらな地域であったこともあり、樹木のない乾燥した空間を醸成しました。現存最古の神話であるメソポタミアギルガメシュ叙事詩では、造船材や内装材に用いたレバノン杉(香柏)の伐採と森林の番人フンババの殺害が、いわば環境問題の起源のように語られています。ローマ帝国キリスト教が国教化すると、ガリアやゲルマニアの森林が、神/悪魔=文明/野生=耕地/森林の二項対立的論理のなかで次々に開発され、とくに中世の大開発時代においては、大規模に耕地化・牧草地化されてゆきました。また、18世紀の産業革命期には、石炭への転換が図られる以前、工業を支えたエネルギーは木炭であって、多くの森林が薪炭材となって消費されたわけです。熱量の獲得と耕地開発は、樹種をほとんど選ばない点においては材木としての使用以上に、森林伐採の普遍的な原因となりえたのです。