私は小学唱歌「ふるさと」が嫌いなのですが、今日の講義を聴いて一層嫌いになりました。

ぼくもあまり好きではありません。そもそも、遠くにあって思う故郷が創出されるのが、やはり日本の近代なのです。これは、もともと移動性のなかにあった人々の暮らしを土地に縛り付け、家父長制的家族に固定し、租税・兵役負担の安定的な単位とすることが目的でした。「ふるさと」には、その関連で共同体的紐帯を強化する機能も付与されており、それゆえに東日本大震災後に喧伝されたのだと考えられます。講義のどこかの回でお話ししたように、固定された「故郷」に束縛されてあることは、むしろ自然災害の被害を大規模化させてしまいます。にもかかわらず、「故郷に帰る」ことを強調する歌がもてはやされたことには、あえて「帰宅困難区域解除」も問題を持ち出さずとも、何らかの意図があったのだと考えざるをえません。