古代的蛇=男性、中世的蛇=女性というのは、日本での話ですか。中国では西王母ら神仙界、死後の世界を司る女神は蛇体であったということですが、なぜ日本では女性の罪業の象徴のイメージがひどく浸透したのでしょうか。

一応は日本の話ですね。中国では、仏教文化が東アジア的なものへ大きく開花しますが、一方で、それらと交渉しつつも独自の価値観・世界観を持った道教儒教などが存在した。中国仏教も蛇のありようを攻撃していますが、その影響は、道教儒教、あるいは一般社会において限定的なものに止まったといえます。一方、日本では仏教の言説の力が大きく、神祇信仰もその影響を受けて初めて神道として形を整えてゆきますし(しかも前近代においては神仏習合が一般的)、民間にも強く浸透してゆきます。もちろん、蛇のプラス要素も残存してゆきますが、マイナス要素が大きくなったのは、やはり仏教の影響力の差異、仏教に比肩しうる宗教の存在の問題が大きいでしょう。