拠点的な環濠集落について、「都市と考えられる?」とありましたが、むしろ都市とは別ものなのでしょうか?どこが違うのですか?

都市の定義の問題です。日本の歴史学界を長く規定してきた唯物史観においては、都市とは社会的分業と階級分化の結果として生じてくるもので、多様な産業に従事する人口が集中し(農業においては多く外部依存)、周辺の諸集落に対し社会・経済、場合によっては政治の中心的役割をなすものとされます。しかし弥生の拠点的環濠集落は、周囲と比べて人口の集中度は高いものの、社会的分業と階級分化については地域ごとの多様性が大きく、未だ政治・社会・経済の中心とはいいがたいとの批判もあります。1990年代を中心に、この問題について広く論争が行われましたが、結果的には都市の定義の問題に帰着し、充分な成果が得られていません。上で言及した新年代観に基づく都市景観の捉え直しも、都市論争に一席を投じることになりそうです。