『もののけ姫』で神格化されている動物は、弥生的な動物と縄文的な動物、どちらもいるなと思いました。

そうですね。『もののけ姫』は室町時代が舞台なので、中世に至る神話・説話・伝承に登場する神的な動物たちを、総動員している印象です。縄文時代のところでも回答を載せましたが、古代の神話では、イノシシは人間に対して対立的な役回りで登場し、シカは反対に融和的な役回りで登場します。シシ神のモデルがシカだとすれば、(まあシシ神は融和的なわけではありませんが、攻撃的でもないので)『もののけ姫』はそのセオリーを守っていることになります。なお、同映画に描かれた動物神・精霊などは主に2つにカテゴライズできます。ひとつは犬神・猪神・猩猩などのグループで、森林の自然環境に寄生している点で人間と同レベルであり、やはり人間と同じように祟り神化します。白人に征服される原住民のイメージです。そしてもうひとつがシシ神と木霊のグループで、これは自然環境の根幹を表象する存在です。とくにシシ神は生死を司る者で、首を取られてあらゆるものに死をもたらす暴走を始めますが、呪いを授ける祟り神とは異なる描写になっています。