天皇陵の内部を調査できるようになることは、この先あるのでしょうか? / 墓暴きのような心理的嫌悪感が、考古学研究を阻害するなどのことは、他の国々でもあることなのだろうか。 / 皇室の祖先が朝鮮系だから、皇室の祭祀や天皇陵が隠されているという記事を読んだことがあるのですが、学術的に正確性はあるのですか?

やはり、天皇制が、「象徴」とはいえ顕在であることがネックでしょう。万世一系は虚構とはいえ、天皇制を支える重要な神話なので、陵墓の発掘によってこのあたりのことが大きく覆されれば、その正当性・正統性は喪われてしまう。天皇家神道の一宗家に落ち着き、天皇制が廃止されることにならない限り、陵墓の発掘は難しいだろうと思います。日本の近代国家は、古代に復帰することで近世の払拭を諮った、しかもその「古代」も近代神話としての「古代」に過ぎない歪なものでしたので、その弊害が現在にも残っているのだということです。朝鮮半島などから列島へ渡来してきた人々は、縄文時代以来の大きな流れのなかで、列島在来の人々と平和的に交配をしてきたことが、DNA分析などでも確認されています。現行のわれわれの塩基配列にも、そうした人々の痕跡を確認できます。現在の天皇家に連なる天皇家にも、もちろんそうした痕跡は確認できるでしょう。渡来人と繋がりの深かった葛城氏や蘇我氏と姻戚関係を結んでいましたし、桓武天皇の母親は渡来系氏族の出身です。何度もいうように、ヤマト王権自体がそうした複合的な文化のるつぼ、あるいはサラダボールのメディアだったのであり、それを代表する大王家には多くの血が流れ込んでいたことが想定できます。朝鮮系の…という想定自体が、近代的な認識枠組みによるものであり、ナンセンスだと思います。ちなみに皇室の祭祀については、古代の段階から幾つも文献記録が残っています。最重要の大嘗祭についてもしかり。まったくの秘儀というものは、もはや存在しないのではないでしょうか。