イザナギ・イザナミの黄泉国神話で出てきた葡萄、筍、桃は、何かしら意味合いがあって、作中で使われているのでしょうか?

桃については、中国の戦国時代という極めて古い時代から、辟邪のツールとして使用が確認されます。『周礼』に書かれた儺という悪霊祓いの儀式は、桃の弓や桃の枝を用いますが、そのまま日本にも採り入れられ、宮廷で追儺として斎行されます。葡萄や筍は、蔓が伸びる、筍自体が群体で生えどんどん大きくなる点で、やはり邪気を祓う生命力の象徴です。これらに基づき悪霊から逃れるというくだりは、実は「呪的逃走」と呼ばれる神話の一形式、一要素で、世界中に確認されるものです。日本列島でも、その後、昔話の「三枚のお札」などで、小坊主が鬼婆から逃れるためにお札を投げ、川や火の海を出現させるという展開が出てきます。