古墳時代に馬がもたらされますが、馬車が入ってこなかったのはなぜでしょうか。 / 古墳時代に入ってきた馬は、日本原産の馬とはどう違うのでしょうか。 / 馬が一般にも身近な動物になったのはいつからでしょうか。

「日本原産」とされる馬は、古墳時代以降に根付いたものなので、「古墳時代に入ってきた馬」と「日本原産の馬」とは同じものを指します。現在、一般に「馬」と認識されるサラブレッドなどより二回りほど小さな体格のものです。古墳時代においては未だ貴重で、首長層と結びつき、その権威を象徴する存在でした。古墳の副葬品として馬具が多く出土するのは、馬自体が身分の高い人びとの乗り物であったからです。以降、古代国家などは各地に牧を設けてその繁殖に努め、中世以降、次第に庶民層でも、馬を労働力として使用できるようになってゆきます。馬車が日本に入ってこなかったのは、まず、地形が起伏に富み道自体が狭隘なため、車を利用できる場が都市周辺に限定されていたこと。また、軍事的色彩を強く持っていたことから、平時の乗り物もしくは運搬用として、車を牽くような形式では使用されなかったものと考えられます。ちなみに、牛車はすでに7世紀の段階で運搬用に使われており、藤原京造営にも使用されたことが考古学的に確認されています。牛は気性が穏やかで年少者でも扱うことができ、歩くスピードは遅いものの持久力に優れています。車を運用可能な都市周辺においては、平時では牛車の使用で充分だったのでしょう。