日本に儒教が入ってくるのは飛鳥時代なのに、本格的に日常生活に取り込まれるのは江戸時代に入ってから、というのはどうしてですか?

授業でもお話ししましたが、現在では当たり前の道徳のように考えられている長幼の序、君主に対する忠、父祖・両親に対する孝、友人に対する義などが、儒教の教えが浸透する以前の倭においては、必ずしも自明の道徳・倫理ではなかったのです。ゆえに、これらの価値観が定着してゆくには、非常に長い時間を有しました。しかし、身分に応じて服装を区分する、話し方を変えるなどの礼儀も、実は儒教に由来します。そうした国家によって制度化しやすいものから始まって、だんだんと、民衆の世界にも儒教思想が入り込んでゆくのです。