日本は飛鳥時代、これほど異文化を受け入れていたのに、平安時代以降に閉鎖的になってしまうのだろうか。
そんなことはありません。今年は平安時代を詳しく扱う時間は持てませんでしたが、「菅原道真の建議によって遣唐使が廃止され、外来文化が入ってこなくなることで国風文化が栄える」といった考え方は、誤りであることが指摘されています。実は、道真の建議を受けて遣唐使停止の会議が行われたこと自体、史料的には確認できませんし、遣唐使が停止に至ったあとも、中国の民間船は大宰府との間を往復し、多くの唐物が列島へともたらされているのです。『源氏物語』にも『枕草子』にも、当時の貴族社会で中国舶来の品々、中国的知識がいかに珍重されていたかが記されています。列島文化は、常に対外的要素との交渉のなかで育まれている、ということは間違いありません。