県犬養三千代が後宮において女性官僚をとりまとめていたというが、女性官僚の世界がどのようになっていたのかあまり聞かない。
奈良時代の律令官制においては、後宮十二司という女性官僚の機構が整備されています。具体的には、後宮における天皇の日常生活に供奉する内侍司、神璽・関契など天皇御用の雑物を管理する蔵司、書籍・紙・筆・墨・楽器を扱う書司、医薬に関して供奉する薬司、兵器を掌る兵司、諸門の鍵を管理する闈司、輿・蓋・湯沐などを掌る殿司、清掃・舗設を担う掃司、水・粥などを掌る水司、朝夕の食事に奉仕する膳司、酒を担う酒司、衣服の制作を行う縫司、がそれです。中国王朝の宮人が皇帝の家に奉仕する未婚の女性であったのに対し、日本の女官は男性官僚と並列して国家に奉仕し、それゆえに官位を持ち、婚姻も許されていました。これは、大化前代からの、女性の政治関与の伝統に則ったもので、唐令に倣って作られた古代日本の律令官制が、中国と大きく異なる点のひとつです。