2015年の新検定基準で「政府の統一的見解に基づく」とありましたが、これは領土問題のような場合についてではないのでしょうか? / 教育基本法の定める「愛国心」とは、戦時中のような強い愛国心ではなく、国や地元への愛着ではないでしょうか?

両方とも、その定義が曖昧なところが問題なのです。つまり、いかようにも解釈をすることができ、適用範囲を拡大することができるということです。現政権は些細なことまで「閣議決定」することによって、専門研究者の見識や一般社会の常識とはかけ離れた統一見解を作り出しています。また、たとえ領土問題のような事柄についてでも、日本政府の立場だけを正しいものとして教え、教科書の検定意見にあったように「領土問題は存在しないのが日本の立場」として紹介しないのなら、国民どうしの理解は一向に深まらず分断が深まるだけでしょう。「愛国心」も、わざわざ法律に定めその涵養を義務づけるわけですから、それは国民国家が国民に求めるイデオロギーとしての「愛国心」です。また、国や地元への愛着に沿うか沿わないかなど、さらに個々人の主観的な問題であって、一層検定意見を付けてまで公教育で醸成するようなものではないはずです。