現在の教育のあり方は、戦前の教育のあり方に近づいているとの指摘がありましたが、現在だからこそ同じ過ちを犯さないように、何ができますか?
「戦前回帰」といわれる問題ですが、ぼく自身は、単純にこの一言で片付けられる問題ではないと考えています。授業でも少しお話ししましたが、当時と現在とでは、日本を取り巻く世界情勢も、国内の事情も異なります。しかし、教育において国権が強化されているのは確かで、教育の仕方や内容に至るまで、政府による統制が強まっている情況です。「現在だからできること」というのは、やはり戦前・戦中の教育体制がどのように構築されていったか、それが社会にどう浸透していったか、そのことによって国民がいかなる苦難に直面することになったのかを、しっかりと学んでおくことです。そのうえで、そうした知識に基づいて現在の情況をみすえ、批判的に思考することができるようにする。かつては、国民から思考することが奪われ、国家の方針を批判的にみるようなスタンスは、社会的な抑圧を受けました。現在も、国民からリテラシー能力を奪う趨勢は続いていますので、しっかりと注視してゆかねばなりません。