マジョリティの歴史が優先されてしまうと、マイノリティの歴史はないものにされてしまうというお話を、序盤で聞きました。それを分けて考えることはできないのでしょうか? マイノリティの歴史は積極的に排除されてしまうものなのでしょうか?
のちの中世史のトピックでは、アイヌを扱うつもりでいます。その際に具体的に示してゆきますが、皆さんが学んできた高校までの日本史では、アイヌをどのように学んでいたでしょうか。恐らくは中世〜近世で琉球とともに、列島の北端と南端(西端)の歴史といったニュアンスで少しだけ扱われ、あとはコシャマインやシャクシャインの反乱、近代の北海道旧土人保護法の関係で言及されるのみだったと思います。そもそもアイヌの民族形成は、中世にユーラシア北方の経済圏のなかで行われており、日本一国史のなかでは把握することができません。よって、ナショナル・ヒストリーにおいては常に周縁に置かれ、アイヌの人々の視点に立っては語られず、不充分な叙述に止まっているわけです。