言語論的転回のところで、同じ空間に生きていても、個々人や時間によってみえる世界は異なり、唯一普遍の世界は存在しないというお話をされていましたが、言葉には人の価値観を共有する力もあり、ものの見方には何かしら共通のものもあると思います。 / 言葉が見方を再構成するから、個人や時代によって叙述の仕方が異なるというのは分かるのですが、そこから普遍的な世界がないとはいえないと思いました。すべての叙述に共通点があれば、普遍的世界もあるはずではないでしょうか。

主観を排した普遍的世界が存在しないというのは、量子力学的実験によってもある程度明らかにされています。しかし、われわれが作り出している環境の世界の外部については、確かにある程度想定することが可能です。ただし、授業でもお話ししたように、それをわれわれが観測するのは、少なくとも現状においては不可能なのです。われわれが主観によって構築している世界に共通性が現れるのは、例えば間主観性、共同主観性など、客観的な普遍性とは異なる言葉で説明されています。