『歴史秘話ヒストリア』などの説は、ほぼ間違っているのでしょうか? とくに気になるのは、イスラエルから秦氏がやってきて、日本はイスラエルとの関わりが強いという話を信じているのですが、先生はどう思われますか?

『ヒストリア』は、まるっきり間違いを描いているわけではありませんが、見せ方に問題がありますね。秦氏イスラエルの話は、史料的にはまったくのデタラメですので、あまりこだわらないほうがいいでしょう。そもそも「秦」字を太秦景教と結びつける説ですが、「秦」は彼ら渡来人が氏族名として持っていたわけではなく、ヤマト王権新羅からの渡来人を一括りに呼んだ可能性が高いと考えられます。他の渡来人である漢氏のアヤが加羅諸国の安耶・安羅、狛氏のコマが高句麗もしくは馬韓を指すように、秦も同氏の故地である蔚珍郡海曲県の古名「波旦」、現在の韓国東岸慶尚北道・江原道の境界付近の名称に由来するのです。移民を故地の名称で総括する政策は、六朝の中国で一般的に採られたもので、古代日本もそれに従ったに過ぎません。