誰も研究していない分野やテーマは、そもそもどのように見つけるのか? 先行研究や史料のないときの不安はないのか? / どういう経緯で毛皮獣の養殖に目を付けたのですか?

今回の毛皮獣の件は、いってみれば偶然がもたらしたものでした。少数民族政策の勉強のためにロシアへ留学していた元教え子から、「こういう話があるんですよ」と教えて貰ったのです。ロシアでは現在でも、必ずしも毛皮をとるためではなく、キツネをペットとして飼育することについて、数十年にわたり研究が行われているようです。そもそも、用心深い動物として知られるキツネを養殖できるとは思っていなかったので、話を聞いて非常に驚き、調べ始めたのがきっかけでした。そもそも、北方狩猟民の生活や神話については強く関心を持っており、また大日本帝国の北方拡大についても環境史的興味を持っていたので、調べ初めていろいろなことが繋がってきたわけです。ぼくは元来、歴史学の中心的なテーマにはあまり接触せず、周縁ばかりを辿ってきた人間なので、先行研究があまりないところに踏み込むことが多かったですね。確かに不安もありますが、この年になると、他人の研究論文を読むより直接史料を読んでいたほうが、また現地で生の話に触れていたほうが面白いので、そちらの喜びや興奮のほうが大きいかと思います。