歴史学や民俗学、民族学、パブリック・ヒストリーなどそれぞれ名前が違っており、現状では異なるものとして扱われているようだが、果たして区別する必要があるのだろうか?
歴史学や民俗学、民族学(文化人類学)は、それぞれ対象や方法論、学問的伝統が異なりますので、隣接する分野ではありますが同じ学問とはされていません。歴史学が、文字で書かれた記録=史料を素材として過去の事実を追究してゆくのに対し、民俗学は、口頭で伝えられてきた記録=口頭伝承を主要な材料に、主に庶民階層の心性・生活文化を追究してゆきます。民俗学=フォークロアが国内の文化を扱うのに対し、民族学=エスノロジーは、異文化を対象とします。歴史学はフィールドワークなしでも成り立ちますが、民族学や民俗学は、フィールドに出ることなしには研究が進捗しません。主に近代以降の歴史のなかで、それぞれがお互いを批判したり、補完しあったりしながら性格を変え、現在に至ります。パブリック・ヒストリーは、歴史学や民俗学、考古学、博物館学、メディアとの関係のなかで起ち上がってきた新しい研究領域で、日本ではまだまだ一般的ではありません。