何かを批判している説を再批判することは重要と思ったが、自身の意見への批判は考慮しないのだろうか? 他の選択肢はないのだろうか?

優しい意見ですね。ひとつ誤解があるかもしれないと思うのは、非難と批判とは異なる、という点です。非難には「咎める」といったニュアンスがあり、相手の人間としてのあり方も含め、「正す」という行為になります。場合によっては、人格否定を含むこともあるでしょう。それに対して「批判」とは、相手の人格云々ではなく、その考え方や意見の弱い点、欠落や誤っている点を指摘し、より広い視野や、より高位の次元へ開いてゆくことを助ける、という意味も持っています。学問の世界は、後者の批判によって成り立っています。自分で懸命に研究を重ねていても、それは結局一個人の限られた視野を出ることはできません。他者に指摘されて、ようやく気付くことがたくさんあるのです。学問は、どんな孤立した研究でも、決して独りで行っているわけではなく、独りで完成するものでもありません。研究者として自らの研究をオープンにしていちばん辛いのは、批判が何も寄せられないことなのです。