『菊と刀』に関する話のなかで、日本では自己責任論が根強いとありましたが、一方で集団主義、和といった全体性が大事にされているので、ピンときませんでした。
そうですね、確かに。列島社会では集団性、つまり共同体の規定力が非常に大きく、それに順応すること、適応することが求められます。個々人がそれに対応することで、より共同体規制は強固になり、全体の力は明確になってゆきます。問題は、誰かがそこから外れた場合、それに反する行動を取ろうとした場合です。集団は彼/彼女を「和」のなかに引き戻そうとしますが、それでも回帰が得られなかった場合には、それを無視、もしくは疎外するようになる。どんな目にあっても自分が悪いのだ、集団に同調しなかったからだと。それが、自己責任の正体です。よって、集団性と自己責任とは矛盾しないのです。