移住と災害との関係について、移動生活が日常的ならば土地への知識もないはずで、災害発生時の避難なども、かえって難しかったのではないか?

移動生活者は、変化に富んだ環境のなかを水や食料を探し、危険を避けながら移動してゆくので、そもそも、定住生活者に比べ自然環境の変化、気候や地形から得られる情報に対して敏感なのです。前もって避けられる危険にはあえて近寄らない、そうした点も含めて、「災害に遭う確率が低い」のです。また、これは今回の東日本大震災によって明確になったのですが、地域の災害情報に通じていると、そのことが縛りになって被害を大きくすることもあるのです。例えば三陸地方では、以前の大津波のときに大丈夫だった場所へ逃げ、安心していたところが、想定を上回る津波によってさらわれてしまった、という話もありました。防災・減災のためには、もちろん過去の知識も大切なのですが、それに束縛されない柔軟な危険感受性を持つことが、最も大切なのです。それは変化に遇うことが少ない定住生活より、常に変化にさらされている移動生活のなかにおいてこそ、醸成されてゆくものです。