縄文土器の文様は、単なる意匠でしょうか、それとも祭祀や呪術などの意味があるのですか?

縄文時代の紋様のうち、押型文、貝殻沈線文、条痕文などの紋様は、まずは一般的な意味でのデザインとして考えておくべきでしょう。何からの意味はあったのかもしれませんが、いまそれを一概に想定することはできません。しかし中期の極めて立体的な造型の土器などは、ひとつの世界観、宇宙観、神話を表現するような象徴性を持つものと考えられます。弥生時代にも土器絵画はありますが、それは土器を単なるキャンバスとして、扱っているにすぎません。しかし縄文土器の場合は、文様と土器とは不可分の関係にあり、その土器だからこそその文様が成り立つといった位置づけになります。例えば、女神が子どもを出産しているレリーフの施された土器は、その土器自体が、女神が胎内から堅果穀物を生み出す神話を体現している、とみるべきなのです。火炎土器もそうした類のもので、土器自体が、燃え立つような生命のエネルギーを体現している。そこから生み出される料理を食することに、生命力の回復や更新など、何らかの呪術的な意味があったものと考えられます。