世界史では文明の転換点のひとつは「鉄」ですが、日本史の場合は何でしょうか。土器ですか?

縄文土器に匹敵する土器は、同時代の世界のどこにも存在しないので、確かに画期だということはできるでしょう。それ以降の弥生土器、須恵器、土師器など、列島的な陶器文化の起源をなす、という点においても重要です。また、縄文土器が青銅器や鉄器と異なるのは、それが自然の恵みの基底にある土から作られているということ、硬度の強弱や意匠の巧拙はともかく、誰にでも作ることができるという点です。それに比べて金属器は、素材の収拾から精錬、加工まで多くの専門的知識・技術、ネットワークを必要とし、社会的分業・専門化、権力の広域的な介在が前提になっている。金属器は階層化された較差社会を象徴する道具であり、土器は平準化された平等社会を象徴する道具であるといえるでしょう。