花粉分析の方法によって、正確に過去の気温が分かるとは思えません。どのような科学的根拠があって、使用されているのでしょうか?

授業でもお話ししたとおり、古気温曲線を構築するための花粉分析は、過去の正確な気温を算出するためのものではありません。1年ごとの相対的な変化が分かればよい、という程度のものです。例えば、尾瀬沼という限定的空間の内部であれば、沼地の滞留によって多少の花粉蓄積の偏りが生じても、複数の地点からサンプルを得ることで補正できます。複数の花粉の量を調べ各時代の植生を復原する、といった作業では不都合もありますが、古気温変化の相対的な復原においては、とりあえずそれで充分なのです。より正確な情報は、対流のない汽水湖の湖底から得た年縞や、屋久島の古代杉などから得た放射性炭素同位体の分析によって導き出せますので、それらをさまざまに比較検討しつつ、日本列島のおおまかな気候変動のあり方、地域による大まかな相違などを構築してゆけばよいわけです。