古墳時代は寒冷期であったことが王権の出現に結びついたとありましたが、では仮に温暖期であったとしたらどうでしょうか?
この「if」はなかなか難しいですね。かつては弥生から古墳にかけての変化は、まさに温暖期の出来事として説明されていました。単純に、稲米の収穫の増大→余剰生産物の増加→貧富の拡大→富者の権力拡大→突出した首長の誕生→王の出現、と理解していたわけです。しかし、収穫の増大だけで王権が成立しうるかどうか。それぞれの地域的政治グループ=クニのそれぞれは、本当に国力が増大するだけで「大乱」のような状態を呈したでしょうか。やはり寒冷化によって、前代に増加した人口を支えてゆくのが難しくなり、また多雨な情況で優れた治水の知識・技術を必要としたことから、ときに戦争を伴う離合集散の果てに、巨大な王権が屹立してくるのではないでしょうか。もし古墳時代が温暖期であったら、各地で幾つかの特徴ある政治グループが屹立している状態が、もう少し長く続いていたのではないでしょうか。