河内地域の古墳群が世界文化遺産に登録されたことについて、どうお考えですか?
河内の古墳群に限らず、まず陵墓に選定されている古墳については、その学術調査の可能性について、長く宮内庁と歴史・考古関係の学会とが折衝を続けてきた歴史があります。その結果として、これまで立ち入りさえ許されなかった場所への踏査が許可されたり、保全整備の工事に伴う表面の発掘調査などが可能になったりと、次第に公開へ向かってきた経緯があります。世界遺産化が、かえってその流れに水を差さないかがやや心配です。石見銀山や、九州の明治産業遺構などをみていますと、海外も含めてその肯定的評価をアピールするため、歴史的遺構の場合は必ずあるマイナス要素が隠蔽されたり、ねじ曲げられたりすることが少なからずあるようです。誉田御廟山古墳や大仙陵古墳の場合、アカデミズムの世界では確定していない「仁徳天皇陵」「応神天皇陵」という表現が、分かりやすく喧伝されてしまうのではないかという危惧もあります。大阪府は、一方では文化行政にかかる費用をどんどん削減していますので、これらを政治的に利用してゆくであろうことは目に見えています。天皇制の創出に関わる重要な、しかし政治的に微妙な案件でもあるわけで、まずはきちんとした調査と情報の公開、学術的な議論の活発化、それを踏まえた一般へのアピールができるとよいと思います。