天皇=神というのは、直系のみに当てはまるのですか?

あくまで天皇の位に関するものです。柿本人麻呂が即神表現を生み出している段階では、高市皇子忍壁皇子など、天武の皇子たちも「神」として扱われていますが、それはやはりプリミティヴな段階にあったからでしょう。伝統的には、古墳時代の首長が、古墳祭祀を通じて自らをカミとしていたことと関わりがある、と思います。古墳祭祀の位置づけには諸説ありますが、歴代の首長を〈王〉たらしめてきたエネルギー(例えば「首長霊」などといわれるもの。『書紀』などには「天皇霊」との言葉がある)を継承し、支配を正当化するものであったことは確かでしょう。そういう意味で、天皇は即位に関する種々の祭儀を経て〈神〉になるのであり、皇孫としての血統が決定的要素ではない、と考えます。ゆえに、直系や傍系といった系譜概念は関係ありません。