死者が神になりこの世を見守る目的として、古墳を造ったと聞いたことがあります。どうなのでしょうか?

それはかなり通俗的な説明ですねえ。確かに、古墳に埋葬されているのはカミなのか、それともヒトなのかという議論は、未だに古墳時代関連の重要な論点のひとつです。前者の場合、古墳を祀る現首長=被葬者の後継は、古墳祭祀をカミを生み出すもの、あるいはカミを祀るものとして挙行していることになります。それは、現首長とその統治を守護する役割を期待されているのでしょう。一方後者の場合は、現首長は被葬者から王としての神的能力を受け継ぎ、いわゆる首長霊継承祭祀のようなものとして、古墳祭祀を行っていることになります。いずれにしても、古墳は地域権力者との関係が密接であり、現代のわれわれが考えるような、世界全体を救済してくれるような存在ではなかったと考えられます。ヤマト王権自体、高天の原の神々の権威を背景に全国統治を進め、他の地域の神々を殺害したり、他の氏族の始祖神を抑圧し、暴力的に服属させたりするわけですから。