前回のリアクションで、埋甕に描かれた絵は「女性を戒めたもの」と誤解されてしまいましたが、男女に関係なく、「同じことを繰り返さないよう、過ちのないよう注意する」という意味で描いたとは解釈できませんか?
うーん、いいたいことは分かります。まずあの絵画ですが、これもずいぶんと想像の余地があるわけですが、女性の身体、とくに生殖器の部分と地面とを繋ぐような影が描かれているものです。状態としては、嬰児の骨が納められ、住居の入口部分に埋められていました。絵画自体は、形象自体は確かに流産の様子を描いたものともみえますが、縄文の造型や絵画はほぼ吉祥のもの、実現の起源を込められたものなので、流産の様子である可能性は高くありません。また戒めというならば、描いたものを目に触れる場所ではなく、埋納した意味が分かりません。それから縄文時代の出産は、家族や社会が補佐できることは少なかったと思われます。だからこそ土偶のように、出産が女性個人の表象として表されるわけです。いわば出産は、大自然のエネルギーが女性の身体を通じて具現化するようなもの、とみなされていたのではないでしょうか。まだまだ、人間の営為が介在しうるものではなく、それゆえに生命の営みの根源として重視されたのでしょう。そういうわけで、可能性はまったくないわけではありませんが、「同じ過ちを繰り返さないよう戒めとして描いた」と解釈するのは、現時点では難しいかと思います。