イギリスやフランスが交易で先住民に武器や火薬を渡したとして、彼らはそれを効率的に使用できたのだろうか。また、抵抗活動に利用されたら逆に困るのではないか。

まさにそのあたりのことが、交易のポイントなのでしょう。ヨーロッパの武器や火薬は先住民の間で珍重されましたが、当然そこには、それが(最大限には)有効活用されないような配慮があったと思われます。まずは価格の問題、極めて高値で取引することによって、数量的な浸透の程度を調整する。最新鋭の装備は販売しない、という配慮もありうるでしょう。日本の幕末の場合もそうでしたが、場合によっては対戦国になりうるような、しかもヨーロッパにとって〈未開〉な国に回されてくる武器の大半は、本国では旧式になり需要のなくなったものです。また、銃器にしても火薬にしても、それを整備したり生産したりするには知識・技術が必要であり、それらを供与しなければ、先住民社会の武器使用は半永久的に交易に依存することになる。それらを使いこなすためにも、西洋式の軍隊調練をはじめ、一定の組織編成や訓練が必要になってくる。以上のようなことを勘案しながら交易をしていれば、先住民にとってヨーロッパ式の武器や火薬を、一定の期間は珍奇な宝物に留めておくことが」可能でしょう。