中国や韓国からすると、日本の首相が靖国神社を参拝するということは侵略戦争を起こした人物を肯定しているのと同じだ、日本は戦争に対して反省していないというが、戦争を肯定しているのは中国、韓国だろうと思う。軍事費を増やしたり、積極的に戦争を意識していると思う。
困りました、これまでこちらが講義でしてきた話を、8割方聞いてくれていなかったのでしょうか。私も中国や韓国の政治的な駆け引きを100%肯定しているわけではありませんが、慰安婦問題にしろ徴用工問題にしろ歴史認識問題にしろ、彼らが日本に対して主張していることには多く正当性があります。例えば、今回は靖国神社の問題ですが、同神社の祭神選択・奉祀方式の基準が、大日本帝国の価値観に基づいていることは間違いありません。靖国が設置している軍事博物館遊就館は、古代から第二次世界大戦に至る日本の戦争、とくに対外戦争をすべて肯定しています。歴史学においては通常神話的な存在とされる神武天皇はもちろん、三韓征伐を行ったという神功皇后の実在も認め、称賛しています。満州事変は関東軍の暴発、満州国は日本の傀儡と考えるのが通説ですが、同館の展示では前者が反日運動の鎮圧、後者が民族自決の立国と位置づけられています。靖国神社の提示する歴史観は、いわば皇国史観そのものなのです。よって、同神社に閣僚が公式参拝するとすれば、その歴史観を肯定しているのだと受け取られても文句はいえないでしょう。国家として戦没者を追悼する必要があるというのならば、毎年天皇・皇后も臨席のもと武道館にて全戦没者追悼式が開催されていますし、常置施設が必要ならば、特定の宗教・宗派に限定されない、千鳥ヶ淵戦没者墓苑を拡充する案が正当でしょう。靖国のありようをきちんと認識せず、その歴史に関しても無知のままで、逆に中国や韓国を批判する人びとが多いようでは、歴史認識に問題があると疑われても仕方ないだろうと思います。ちなみに、日本の軍事費(防衛費)は確かに中国よりは低いですが、それでも韓国よりは高額で、00年代以降は概ね500億USドル前後、常に世界10位以内の座を占めています。対外軍事力を否定しているはずの平和国家としては、あまりに高額で無駄も多い。他国の戦争を批判できる立場では、まったくありえません。