レポートのテーマについてですが、「当該アクターの抵抗する動き」というのは、アクターがモノの場合、第三者のみせる抵抗でもよいのでしょうか?
モノをアクターと考える場合は、そのモノが他のモノ、動植物、人間などとの関係においてみせる動き、そうと認識される動きは、あくまで関係のなかで捉えられることを重視してください。これはモノだけではないのですが、あらゆるアクターのあらゆる動きは、すべて関係のなかで決まります。例えば、日本の近世初期には、城郭建築のために断ち割られた巨大な石から血が噴き出す、という説話が出現します。これは人間の心性が生み出した現象ですが、当の石がなければそもそもかかる説話は生まれませんし、時代的・地域的な人間と石との親和性や、中世後期〜近世初期の大建設時代において多くの石材が使用されたことなど、種々のモノ、事象が複雑に関連しあって出現します。そうするとこれは単純に、人間の心理が生んだ、というだけでは済まない問題がみえてきます。アフォーダンス的にいえば、石が人間に、割れば血を噴き出すという抵抗の認識をアフォードした、という表現も可能でしょう。石が、われわれに考えさせているのです。皆さんの日常的な思考を少し動揺させながら、課題のテーマについて考えてみてください。