資料に挙げられている経典類には、如法の呪術を行えば、「智慧ある男子」「美しい女子」を生むことができると出てきます。これは、男子/女子で求められるものが違うのだ、という認識でよろしいでしょうか。

まさにそうですね。卜占や呪術の類は、中国戦国の頃からクライアントとの交渉が行われ、求める方向、霊験などが模索されてゆきます。よって、卜占書の凶事の項目をみれば、当時の人びとが何を不安に思っていたのか分かりますし、吉事の項目をみれば、何を望んでいたのか、ある程度集合的なその様相がみえてきます。出産習俗関係の経典で、「どのような子供を産みたいか」「どのような子供に育ってほしいか」が明記されているのは、まさに親たちの不安/希望を体現していると考えられます。よって、男性には官途で出世してゆくような、あるいは一家を興隆させてゆくような知恵が、女性にはよい嫁ぎ先がみつかる/選べるような美しさが、翻って自家も繁栄させてくれるような美しさが、期待されていたといえるでしょう。怖ろしいことです。