横穴式石室は、完成までどれくらいの期間を要するのでしょう。

規模によって時間の長短はあるでしょうが、仮に多数の労働力が必要な作業を農閑期に限定した場合、数年に及ぶ歳月を費やしたと考えられます。構築過程の基本は、a)築造の諸準備(築造計画の立案・設計、選地、石材の選定、労働力の確保)→b)石室の基礎地形整備(石敷)→c)壁体基底構造の構築→d)壁体の構築→e)天井石の架構→f)墳丘および外部施設の整備、となります。これに並行して、タイミングよく石材の切り出し・運搬なども行われるのでしょうが、そうした副次的な作業においても専門技術者の指導と一般労働者の習熟、実践など様々な局面がみえてきます。今の私たちが想像するよりも、かなり困難な事業だったといるでしょう。詳しくは、右島和夫他著『古墳構築の復元的研究』(雄山閣、2003年)を参照してください。幾つかの具体的ケースに沿って、築造の工程が復元されています。