2018-04-01から1ヶ月間の記事一覧
これは、蛇についていえば最も古い、死と再生の象徴ということになるでしょうね。モノの表象は、時代的に何が支配的になるかという変遷はありますが、例えば前時代のものがある時期にまったく生滅してしまい、別のものと入れ替わるということはあまりありま…
確かに最近は女性が多いようですが、かつてはほぼ男性の職業だったので、あまり象徴的な意味はないかもしれません。最近の傾向は、占い師にカウンセラー的な役割や、母親的な癒し/叱正を求める意識が強くなってきたからではないでしょうか。ただし、以前私…
大事な視点です、もちろんそうでしょう。授業でお話ししたのは、あくまでイデオロギーとその内面化の問題です。人類学や歴史学で差別を扱うとき、必ず付随する問題として、抑圧面ばかりを強調しすぎると被差別者の主体性が剥奪されてしまい、かといって逆に…
『小栗判官』に登場する下半身が蛇の女性は、物語りに京都・深泥ヶ池の大蛇であることが明記されています。『北條時頼記』の弁才天も、弁才天自体が水神であり、半人半蛇の神格であることが形式です。『廿十四輩巡拝図会』も、やはり本文に、蛇女が訪ねてき…
いわゆるルッキズムですね。蛇身の女性が美しく妖艶な存在として表現されるのは、それが信仰の対象であった頃の名残でしょう。弁才天が美しいのと同様の意味です。しかし、江戸中期以降の近世怪談になると、蛇の性質を持っていながら「醜女」と表現される例…
いろいろな説明の仕方ができると思いますが、ひとつの契機は水にあります。蛇が低湿地に住み、常に水との関わりにおいて語られてきたことはお話ししましたが、実は女性も水との密接に関連付けられ、語られてきました。月や潮の干満は女性と同一のカテゴリー…
一応は日本の話ですね。中国では、仏教文化が東アジア的なものへ大きく開花しますが、一方で、それらと交渉しつつも独自の価値観・世界観を持った道教、儒教などが存在した。中国仏教も蛇のありようを攻撃していますが、その影響は、道教や儒教、あるいは一…
インドでも、やはり仏教との関係で龍蛇は貶められています(授業で紹介した、瞋恚を抑えられない者の蛇蝎への転生を説く『成実論』も、インドに由来し(ただし、サンスクリット本はみつかっていません)鳩摩羅什によって漢訳された経典です)。それはまず、…
いやー、メルヘンやロマンを伴うものとしてお話ししたつもりは全然ないのですが…前近代の思考様式は近代以降のものとは違うので、現代人からみるとファンタジーに映ってしまうのかもしれません。しかし、彼らにとって、それがひとつの現実であることも確かで…
これはもちろん、長い時間をかけて経験的に確認してゆき、その情報が世代を超えて蓄積・発展した結果として、ようやく成立したのだと考えられます。その「解決法」に至るまでには、もろもろの試行錯誤があり、生で食べて胃腸を悪くしたり、毒に当たって死ん…
次回お話しするように、弥生時代の定義は縄文時代のそれとは異なります。遺跡から判明する時代・社会情況が弥生時代の指標を満たしていれば、それが縄文土器と類似の形式を持っていても、やはり弥生土器とカテゴライズされるべきものでしょう。上記の質疑応…
温帯地域では類似の情況が出現したと考えられますが、日本列島の縄文時代は、山地森林と海岸地域が比較的近接した場所に生じた結果、双方の環境に適応した生活文化が融合し、特徴的な様相を帯びるに至ったのでしょう。
異なる民族が必ず対立し、紛争するというのは間違いです。両集団の利益に関わる部分で、多少の紛争はあったでしょうが、人間集団は概ね、生存に関わるような大きな衝突は回避する傾向があった。それゆえに、人類は現在も世界中で反映しているのです。かつて…
重要な問題意識です。個々の目的は恐らくさまざまでしょうが、前提となるのは、ホモ・サピエンスが移動によって生活領域を拡げ、その地域に適応することで生存競争に生き残ってきたということです。クロマニヨンとネアンデルタールを比べたとき、氷河期にお…
自然界の炭素原子には、12C、13C、14Cの3つの同位体があります。全体に占める割合としては、安定同位体として壊変しない12Cが約99%と大半を占め、同じく安定同位体の13Cが約1%、放射性同位体の14Cが約1/1兆分の1の微量となっています。植物が光合成を行うと…
すでに旧石器時代の段階で、季節移動の時期を狙い、山中に鹿など待ち伏せした人々の痕跡が発見されています。そもそも氷河期はそうした移動しながらの狩猟が大半だったわけで、動物の習性を観察して狩猟・漁労を行う方法には、縄文時代の人々は長けていたと…
秋に採集した木の実などを保存していたり、魚や肉の燻製を作成して保存食にした可能性も指摘されています。また、冬でも漁労や狩猟は可能で、森林には冬の寒さを避けた獣たちが集まって来ていますので、収穫の絶対量は減少した(ゆえに飢餓で死ぬような場合…
重要な質問ですが、まさにあなたが言い当てているとおりなのです。われわれは、狭小で歪められた主観しか持ちえず、普遍的な客観性には絶対に到達することができない。しかしだからこそ、私しか、あなたしか気づけない、過去の一点が存在するのです。主観は…
これからお話ししてゆくことになるのであまり種明かしはできませんが、例えば古墳寒冷期は、寒冷なだけではなく湿潤で、雨も多く降ったことが分かっています。単純化しすぎるのは問題ですが、概ね、日照時間も少なく、水害も多かったと考えられます。すなわ…
基本的には野外の焚き火、あるいは簡単な炉のようなものを作成し、焼成していたと推測されています。煙穴の付いた簡単な炉穴は、早期にすでに各地で発掘されていますが、充分な焼成温度は確保できない構造であったと思われます。
上で述べたように、土器の文様や形式は、その時代、その地域集団の思想を表現したものです。よって、その形式がある範囲で共有されているならば、それは一定の思想・思考様式を共有している地域ということになり、相違があるならば思想・思考様式が相違して…
文様を付ける目的は、多種多様に考えられますが、やがて世界観、宇宙観、神話を表現するような象徴性が高まってゆきます。弥生時代にも土器絵画はありますが、それは土器を単なるメディアとして、例えば紙のようなものとして扱ったにすぎません。しかし縄文…
まず、〈民族〉とはあくまで社会的・文化的概念であり、〈人種〉のような生物的概念ではないことが重要です(実は人種自体も、生物学的概念としては非常に曖昧なのですが)。すなわち、人種的には同一であっても、別々の民族が存立することは可能なわけです…
「洪積世」「沖積世」はノアの洪水に基づく命名とのことですが、「洪」は洪水の「洪」として、「沖」は何を意味するのでしょうか。また、これはキリスト教圏の人々が考えて、そのまま世界で使用されたのでしょうか。
洪積世(Diluvium)・沖積世(Alluvium)の用語は、17世紀ヨーロッパで地質学が形成されたときに作られた用語で、それぞれノアの洪水により堆積した地質年代、それ以降の流水によって堆積した地質年代を指します。「沖積」自体は、「流された」を意味するラ…
例えば、戦争がなければ人類の技術発達はなかった、冷戦期に科学が急激に発達したが、それが終結したことによって、発達の速度が弱まった、という言説があります。これは一見歴史の事実をいいあてているようですが、幾つかの誤りや隠蔽があります。まず第一…
国家の誕生はある意味で必然的な出来事であり、失敗と捉えることはいまひとつ納得ができません。 / 中国西南少数民族などは生活している環境が悪く、物質的条件が整わなかったから国家化していないのではないか。
現在の歴史学や、社会学・文化人類学など、国家の形成過程を扱っている人文・社会系の科学のなかで、資本主義の形成を最良の到達点・必然的結果と考えている研究者がほとんどいないのと同様に、国家の形成を必然的と考えている研究者もまたほとんどいません…