2012-04-01から1ヶ月間の記事一覧
この見解のルーツは、東京文理科大学(現筑波大学)の学長も務めた佐伯好朗(1871〜1965)による、「太秦を論ず」という論文にあります。彼は中国景教(中国に伝来したネストリウス派キリスト教)の専門家で、昭和16年(1941)、同研究により東京帝国大学よ…
まず『古事記』『日本書紀』自体が、その構成において、神代と人代の区別を設けています。また両書は極めて政治的な傾向を持った書物で、大化改新以降の新しい記述にもさまざまな脚色、改変がなされていますので、中国や朝鮮半島の文献史料、考古資料等々と…
口伝段階での相違もありますが、両者の書物としての編纂方針に起因している部分もあります。『書紀』は、中国的史書の体裁に基づいて編纂された正史ですので、天地開闢の構成には、中国的世界観の基本である陰陽五行説が用いられています。陰陽和合のなかか…
入門的な意味では、中沢新一『アースダイバー』をお薦めします。現在の東京を縄文期の地形に基づいて読み解こうとする書物で、巻末に縄文の地図が折り込みで付いています。しかし、千葉などはカバーしていたかな? ほかに、自分の住む場所の過去の姿が知りた…
とりあえずは、篠田謙一『日本人になった祖先たち―DNAから解明するその多元的構造』(NHKブックス、2007年)でしょうか。発掘人骨のDNA分析に基づく成果で、やはり朝鮮半島や中国北部との共通性が強いものの、縄文では南方との繋がりも強く、日本列島で暮ら…
古代史を考える際には基本史料でもありますし、以降の歴史にもずっと影響を与えてゆく文献です。大いに読む価値がありますので挑戦してください。ちょっと専門的に触れたければ、小学館の「新編日本古典文学全集」に注釈・現代語訳の施されたテキストがあり…
あるとすれば、やはり環境史にリンクした仕事でしょうね。大学の教員、博物館の学芸員などです。とくに、環境社会学や環境民俗学の分野では、かつての人々の暮らしから環境問題解決の糸口を探る、という作業が明確な意図をもって行われています。
説明の仕方としては、大きく分けて伝播論と多元的発生論があります。前者は、ひとつの考え方が何らかのネットワークにより伝達したとするもの、後者は、類似の環境のもとでは類似の物語が発生しやすいと考えるものです。実際は、これらを組み合わせることに…
インセスト・タブーと呼ばれるものですが、全世界的に認められる禁忌のひとつです。かつては、劣性遺伝により生物学的に忌避されたのだとか、エディプス・コンプレックスによって説明されたこともありましたが、現在では、女性の交換を促すための社会的規則…
猪と羊は、納西族にとっての主要な狩猟対象、牧畜対象です。猪は野生を代表する獣のひとつで、自然神である〈署〉という神格の持ちものです。羊は毛や肉を得るための家畜で、その骨は卜占にも使用されます。ヒトと猪と羊が兄弟であったとの設定で、もともと…
神話に歴史の痕跡をみる方法は間違いではありませんが、『古事記』や『日本書紀』は極めて政治的な書物でもあり、そこに記されているのはヤマト王権の主観から語られる物語なので、扱いには充分な注意が必要です。『古事記』の特徴であるオオクニヌシ神話は…
神話は、自然環境に対する説明形式としての一面を持っていますので、自然観や世界観の研究には欠かせないものです。前回お話しした納西族の神話と『古事記』神話の比較も、私の研究の一端です。
次回おみせできるかも知れませんが、縄文土器には、サメやシャチなどをモチーフにした絵画も存在します。川や海にいる生き物のなかでも、より強力な存在に惹かれたようです。現在の狩猟採集民には、「動物の主」に関する信仰が色濃く残っていて、森林におけ…
動物は、生きるために必要な栄養素は、概ね本能によって獲得しています。人間も基本はそれと同じですが、嗜好という文化的要素が著しく発達したため、栄養的にはまったく意味のないもの、もしくは逆に身体に悪いものまで、喜んで食べるようになってしまいま…
縄文時代の料理で一般によく知られているのは、植物質のクッキー(もしくはパン)ですね。これは、遺跡の竈などから、堅果類のデンプン質がクッキー状の炭化物として発見されるもので、東北から中部に至る広がりが認められます。アク抜きしたドングリや栗な…
弥生時代の生業の中心となる稲作は、高度に組織化された分担作業が必要なため、それらを企画・運営・統率する人々、強力なリーダーの存在が不可欠となります。そのため、どうしても労働の量や質に格差が生じてしまい、それはそのまま供給量の格差になって現…
三内丸山の分析・解釈もまだまだ議論があるところですが、それほど大きな社会的格差、階層差が存在したとは考えられていません。同遺跡の大小の住居規模は、居住している家族の人数に比例するもので、社会的位置を反映したものではないとするのが一般的見方…
神話は、日本列島の歴史・文化を理解するうえで重要な意味を持ちます。この講義でもさまざまに取り扱ってゆきますが、大切なのは、そこに書かれた内容が、即何らかの歴史的事実を反映しているとは考えないことです。神話がその社会においていかなる役割を担…
大学は、決められた方法で勉強をするところではありません。授業の受け方も、その授業にどういうスタンスで取り組むのかということによって、個々人で変わってくるはずです。ぼくの講義は、お話しする内容を毎回プリントで配付しますので、そのなかにメモを…
別に、高校の教科書を使うのが悪いとはいいません。基本的な知識を簡易に得るうえでは便利かも知れません。しかし重要なのは、それらの記述を疑って読む、批判的に読み込むことですね。なお、大学生としてもう少し高度なものに挑戦したい、ということであれ…
2000年代後半になって、福井県の水月湖を皮切りに、秋田県一の目潟湖など、全国の汽水湖で良質の年縞が得られるようになってきました。年縞とは、汽水湖のような湖水の循環がない沼沢の水底から取れるサンプルで、毎年の堆積物が縞模様をなしているものです…
「なぜか」といわれると困るのですが、弥生時代の後半から現在にかけては、概ね500〜600年の秋期で寒冷化と温暖化が繰り返されているようです。その転換期には、小刻みな気候の変動が起きているらしく、0〜200年頃はそれに該当するものと思われます。
日本列島に住む人間は、時代ごとにその組成を異にします。大陸から日本列島が分化した氷河期の終わり、列島に残っていた人々を中心にしながら、南方諸島や朝鮮半島、ユーラシア北方などからその都度流入してくる人々を加えて、列島の民族社会は構成されてゆ…
現在のものの見方を疑うことです。当たり前だと思われている視点・方法だけでなく、対象のより豊かな性格を明らかにすべく、可能な限りのものの見方を試してみることですね。
確かに、一国史にも様々な利点はあるでしょう。しかし、ぼくは欠点の方が多いと思っています。例えば、「世界史は高校に入ってから学べるので、中学のうちは自国史を」との見解ですが、子供の能力を低く見積もりすぎなのではないかと思います。実際に、1955…
勤務校の方針もあるでしょうから、理想を達成するのはなかなか困難かも知れません。しかし、昨年度もこれらのことを考えるためのシンポジウムが行われたように、上記のような問題は多くの地歴科教員が共有している課題なのです。勤務校で勉強会を開いている…