2019-11-01から1ヶ月間の記事一覧
まず第一に口頭伝承ですね。今日授業でお話ししたとおり、歴史学研究者には、文字記録よりも口頭伝承を曖昧、もしくは不確かなものだと考えている節がありますが、歴史実践をめぐる人類学研究では、何十代も前に遡る首長の系譜と活動を、淀みなく物語ってゆ…
なるほど、興味深い質問です。異常出生譚、いわゆる生まれ方が異常な例は、例えば聖徳太子(厩戸王)や行基など、通常の人間としてのありようが、史実として確認できる存在にも用いられます。太子は馬屋の前で難なく生まれ、生まれながらにして聡明で言葉を…
例えば中国ひとつをとっても、龍や蛇に対する言及は無数に存在しますので、どこに視点を置いてみるかによって異なる様相を呈してきます。しかし概していうならば、蛇と龍の相違は上位神霊か下位神霊か、ということになるでしょう。例えば道教では、龍は水と…
ぼくの話し方が悪かったかもしれませんが、日光感精の例を挙げたのは、自然物から感精して王を生む、英雄を生むというパターンの1例としてです。そのうえで幾つか付け足しておきたいのですが、まず、古代から現在に至るまでの時間のなかで、天照大神が男性…
ああ、その観点はありませんでした。恐らく、そういうことになると思います。どこかで言及しましたが、『易経』には「積善の家には余慶あり、不積善の家には余殃あり」との一文があって、儒教の家の論理を体現するものとしてよく引用されます。仏教の因果応…
そうですね、授業でも紹介したジン・ワン氏などは、そうした見方をしています。現代からみると異なる要素が一体になっている論理について、かつてレヴィ=ブリュールは〈融即の論理〉と呼称し、それが作用している心性を〈原始心性〉と名付けました。すなわ…
授業で紹介したチベット、あるいはその周辺地域での水葬については、やはり下流地域との軋轢もあって、現在はあまり行われていません。チベットでは出産に関わる限られた埋葬法でしたが、しかしインドのガンジス川のように、何から何まで「流して」しまうの…
授業をよく聞いてください。まず、今回の調査について、ぼくはすべてを肯定して語った覚えは一度もありません。以前に4月の調査について少しお話をして、前回は、11月の調査でそのときの情報がかなり修正された、とお話をしました。すなわち、文献を読むと…
Loyolaの画面 レポート課題を、以上のようにLoyolaに入力しました。何度かお話しした、素材化(material/aization)の問題です。次回の授業にて詳しく説明します。なお評価に際しては、以下のポイントを重視します。a)テーマ、問題意識のオリジナリティb)…
授業でもお話ししましたが、『日本書紀』は、大化改新以降に構築されてゆく、大王家中心の古代国家の価値観で書かれています。大化改新の始まりを告げる乙巳の変のクーデターでは、蘇我本宗家の蝦夷・入鹿父子が、大王家の中大兄皇子・中臣鎌足によって滅ぼ…
レジュメの書きようが拙かったと思います。「禹蔵図」が淵源なのではなく、新石器時代黄河流域の亀甲容器(安徽省含山凌家灘遺跡出土の玉亀・玉板など)に始まり、殷代の卜甲、「洛書」、式盤に至る卜占のツールの系譜上に位置づけられるものである、という…
倭の五王による南朝劉宋への朝貢の時代から、倭の外交に渡来系の人びとが関与していたことは、文献によって明らかになっています。当時、朝鮮三国も頻りに劉宋へ使者を派遣し、将軍職を得て南朝の臨時政府としての位置づけを得ようと、外交合戦を繰り広げて…
いま問題としている7世紀までの段階では、まずは鉄資源を得るためという大きな目的がありました。古墳時代の倭国では、当時鉄素材を自ら生産することはできず、朝鮮半島の南部から交易を通じて獲得していたのです。よって、それらを調達できる豪族たちが権…
重要な指摘ですね。これには少し説明が必要かもしれません。まず、確かに〈和〉と〈武〉は対義語の関係にはありません。東アジアの歴史的文脈においては、〈武〉の対義語は〈文〉です。と同時に、常に、〈武〉よりも〈文〉のほうが価値の高いものと考えられ…
授業でもお話ししましたが、猫は、人間にとって、〈文化のなかの野生〉とでもいうべき位置を占めています。日常生活のなかで私たち人間と共生しながら、決してドメスティケートされてず、私たちのありようを根底から覆すような目線、力を秘めている。長生き…
いえいえ、日本会議や神道政治連盟については、批判的に扱った書物もありますし、新聞記事やtwitterの書き込みも少なくありません。テレビでもときどき言及されていますが、テレビはとくに「本質的な政権批判がほぼできない」状態なので、一般に共有されにく…
必ずしもそうではありません。史料の読解を通じてある歴史像を組み上げようとするとき、あなたならどうするでしょうか。いくらたくさんの史料を読んだとしても、そこから社会の仕組み、その時代ごとの相違などを、復元することができますか? たいていの人に…
国会議事堂は、あくまで戦争を遂行した政府の象徴であって、天皇を象徴していたわけではありません。日本国民の多くは政府に対して憎悪を抱いていても、天皇に対しては別の見方をしていたと思います。それは、戦後昭和天皇が列島各地を旅して回った際、人び…
映画は総合芸術ですので、その製作にはたくさんの専門家が関与します。作家、脚本家、音楽家、美術家、カメラマン、演出家、そして俳優たち。製作会社や配給会社、その映画が売れる、あるいは価値があると判断して資金や資材、あるいは人材を出すスポンサー…
象徴権力の発現の仕方は、ご指摘のように多様性があり、どんな場合にも同じ状態で作用するというわけではありません。確かに、相手が恩義を感じないことで、発動しない場合もありうるでしょう。しかし、こうした行為が社会のなかでなされることを考えると、…
紀伝体は、中国正史に基づく叙述形式ですね。「紀」が歴代の王・皇帝の生涯を時間軸に、治世の出来事を年代順に記してゆくもの、「伝」が王朝に貢献した士大夫たちの伝記です。「問題史」は、あるテーマを設定しそこから歴史を捉えてゆく叙述形式で、通史と…
まず最初に、ぼくは、人間が反省と改善が可能な存在だと思っています。ぼく自身も、まったくの無知、傲慢な状態から、猛烈な反省を繰り返しながら、少しずつ前に進んできたと考えています。それを信じていなければ、学問も研究もできませんし、教育の現場に…
デリケートな問題ですが、まず講義の文脈を考えてください。中国やロシアの毛皮工場が環境保護団体から批判を受けている情況について、「一方的な非難は正しくない。グローバリズムの観点からいえば、中国やロシアの国内市場のためだけに、このような生産が…
まず、動物を人間の管理下に置き、愛玩用に飼育するということ自体に反対です。もちろん、愛玩用に交配された新種の生産、価値を上げるためのブリードにも反対します。他者としての動物を理解し、人間の傲慢に気付くために飼育するのであれば、可能な限り自…
客観主義的には、エゴだと思います。「生まれてこない方がよかった」と日々呟いているひとのなかには、死が目前に迫ってきたとき、必死で抵抗し生きようとする人もたくさんいるでしょう。しかし同時に、本当に塗炭の苦しみを味わっている人、そう呟かなけれ…
妖怪ブームは、近世以降何度か日本史のうえに確認できます。近代以降は、やはり明治の急速な近代化・西欧化、戦後の高度経済成長期など、社会・文化が大きく変動し、伝統的なものが揺るがされる時代情況で生じているようです。水木しげるの妖怪への関心は、…
要するに、マルクス主義の理論、法則を重視する枠組みに批判が高まり、普遍的な抽象的な法則性よりも個別具体的なものごとの解明、すなわち実証が再評価されるに至った、ということです。個々の地域の特性を解明するためには、実証的な成果を積み重ねてゆく…
うん、これは鋭い質問です。われわれが下部構造について語ることができるのは、マルクス主義的にいえば、イデオロギー批判を通じて社会の実相を捉えることができているためです。社会構造・経済構造、あるいは人間の認識の構造そのものによって、人間が考え…
うーん、難しいですね、これも大きな誤解です。お話しした唯物史観は、現在から過去の流れを捉え、古代以降の政治・社会・経済の変転を説明するための考え方なので、唯物史観が古代を破壊したわけではありません。確かに、政治制度が大きく変わったとき、新…
「下部構造が上部構造を規定する」というテーゼは、例えば社会や文化のありようを価値判断して、政治と経済とどちらが重要なのかと考えることではありません。例えば、文章経国思想の支配により民衆の歴史が紡がれたとして、そうした立場を支配層、貴族、官…