全学共通日本史(09秋)

試験=レポートに関する告知です。よく読んでください。

【実施日・会場】 学事部による掲示に従うこと。【テーマ】 講義の趣旨をよく理解したうえで、下記のいずれかのテーマについて調査し、自分なりに論じなさい。評価のポイントは、第1回目の講義で述べたとおりである。 1)日本史における聖徳太子の意味 2)…

レポートは中世や近世、近代が主体でも構いませんか。

もちろん、古代史以外の分野でも構いません。課題に叶ってさえいれば、日本のどの時代をメインに据えても結構です。

レポートの参考文献は書籍が望ましいですか?ホームページからの引用が混ざっても大丈夫でしょうか。

ホームページからの引用については、URL、アクセス日時を書いていただければ結構です。ただし、情報リテラシーの科目でもいわれているでしょうが、書き手の属性がよく分からないページは、学問的に問題がないのかどうかきちんとソース批判をしてからでないと…

コウノトリが赤ん坊を運んでくるという話も、穂落し神に関連しているのでしょうか。

もちろん同じ類の伝承です。とにかく、長い脚・長い首の鳥が命の種を運んでくるという信仰が、ユーラシアの東西に古くから存在したようですね。それがなぜなのかは分かりませんが、彼らが白い翼を広げて「渡る」姿が、他界から幸福を運んでくる吉兆にみえた…

信仰の対象にならなかった動物はいるのでしょうか。 / 小鳥に対する信仰はなかったのでしょうか。

歴史学や考古学など過去を扱う学問では、「なかった」ことを立証するのは困難です。アニミズムという森羅万象に精霊を認めた原始信仰が基盤にある以上、あらゆる動植物に対する信仰は「あった」可能性があります。しかし、人間生活と関わりの深い動物、人間…

鹿を殺すことが、神を殺すことになるとは考えなかったのでしょうか。

これは、狩猟採集社会のアニミズム信仰の復習になりますが、こうした信仰では精霊が本体ですから、送り儀礼を行えば鹿を殺したことにはならないのです。鹿に対する送り儀礼が、弥生時代にどのように実践されていたかは不明ですが、現在でも高知県などでは、…

『もののけ姫』で、シシ神とヤックルが同系統の生き物であるのは、何か意味があるのでしょうか。

これは、もともと特別な意図があったわけではないと思います。映画版『もののけ姫』のもとになった作品のひとつに、宮崎駿による絵物語『シュナの旅』があります。モンゴル高原が舞台で、貧国の王子シュナが神の国から麦を奪ってくるという物語。シュナはア…

もとになった『太平広記』の虎の話にはトーテム的要素がないのに、日本の鍛冶屋の婆には狼の子孫の問題が出ていました。これはどうしてでしょう。また、なぜ鍛冶屋なのでしょうか。

「鍛冶屋の婆」に出てくるトーテム的なくだりは、おそらく憑き物信仰に基づく記述でしょう。これは近世の民話世界で濃厚になって行くのですが、例えば貨幣経済の農村への浸透によって、これまでとは違い突如裕福になる家が出てくる。そのとき所属の村落成員…

翻案された中国の物語を通じて、中国語の語句や表現が日本へ定着することはあったのでしょうか。

前々回の授業で「汝」の話をしましたが、もちろん翻案以外でも、日本の熟語の大部分は中国の書物から輸入されたものです。物語で面白いのは、例えば「縊鬼」という幽霊の話。これは清代の怪異小説『子不語』『閲微堂筆記』などに出てくる首吊り者の幽霊なの…

中国ではそれほどたくさんの虎がいたのでしょうか。今はあまりいるという気がしないのですが。

中国の虎害は大変なもので、その凄まじさはあらゆる文献に出て来ます(もちろん、狼と同様の誇大宣伝も行われたでしょうが)。明代には虎害を回避するための「駆虎文」という祭文が、各都市を守護する城隍神に奉られました。虎の減少は日本の狼とほぼ同じ推…

中国の物語が日本へ翻案されるときには、何か目的があったのでしょうか。例えば『日本書紀』には、小中華としての立場を示そうという意図があったと思うのですが。

『日本書紀』ほどあからさまではなかったでしょうが、漢学者・儒学者のなかには中国正統王朝を神聖視する方向性は強く、そうした意識から翻案が行われたこともあったと思われます。しかし多くは、漢籍に書かれた思想や教訓を日本へも流布しようと、舞台や登…

『前田貞親手記』記載の狼害で、夏に被害が集中していたのが気になります。

旧暦ですが、8〜9月に最も被害が多かったのは確かなようです。春に生まれた子供の餌を確保し、冬を耐える脂肪を身につけるためであったのかも知れません。

なぜ狼に対しては、熊のような送り儀礼が行われなかったのでしょう。

熊と異なるのは、熊が食用や胆汁をとる獲物であったのに対し、狼は食用や薬用として一般的に「消費」されていなかったことです。ただし北海道では、送り儀礼に使用されたとも思われるエゾオオカミの頭蓋骨が、新ひだか町指定有形文化財として保管されていま…

狼が神から恐怖の対象としての獣に簡単にかわってしまうことが、よく理解できません。狼が人を襲うことも、祟りとして認識されなかったのでしょうか?

前回のブログでも少し書きましたが、狼が動物と考えられるに至って、「祟り」という枠組みでは捉えられなくなったようですね。話すと長くなりますが、「祟」という概念は、中国古代の殷王朝が国家的レベルで行う占いによくない結果が出たとき、それを具体的…

蛇は水神であるとのことですが、近所の神社では白蛇を金の神として祀っています。白蛇は普通の蛇と違うのですか。

講義でも述べましたが、蛇には生命の秘密を知っているという信仰がありました(これも起源は水なのでしょう。水は生命の源で、世界の始発には水だけがあったという神話も各地にみえます)。そこから派生して、秘密を守る者、宝を守る者という発想から、蛇が…

熊を神とみなす日本の文化と、そうではないキリスト教の見方を比較する、というテーマでレポートを書いても構いませんか。

もちろん結構です。ただし、書き方としては、日本の特徴を明らかにするという方向で書いてください。

テストの答案は何文字程度で書けばよいのでしょうか。

いつも、400字詰×8=3200字ということで課題を出していますので、まあ3000字程度でしょうか。今回の答案用紙にも、裏表にびっしり書けば3000字以上になる計算ですので、2枚あれば書けるでしょう。あとはどう効率よく書いてゆくかですね。答…

神と仏の違いはどこにあるのでしょう。また、動物が仏にたとえられることはありますか。

日本列島でいえば、神は在来の力ある精霊(アニミズムが基礎にありますので動植物を含みます)、もしくは同じような存在で外国から持ち込まれたもの。仏は仏教における至高の存在で、生命が修行を重ねて悟りを開き、あらゆる迷いや煩悩、苦しみから解放され…

満月の夜に人間が狼に変身する話のモチーフは何でしょう。

狼が人に変身する理由、人が狼に変身する理由は以前にもお話しました。問題は月ですが、月も満ち欠けをしますので、上記の蛇と同じように再生のシンボルとなります。古ヨーロッパの信仰では、力ある満月の夜、精霊の祭宴が開かれると考えられていたようです…

なぜヨーロッパでは狼を農耕の害獣とするのに、日本では害獣を捕食してくれるものという違いが生じるのでしょう。

やはり、牧畜主体か栽培農耕主体かが大きなポイントとなってきます。牧畜の場合、牧場にたむろする羊は最高の標的となります。狼と羊のシンボル性は、童話から聖書にまでみることができますが、その起源は古代ギリシャにまで遡ります。牧場の拡大により住処…

神聖視される一方で害獣ともされるなど、信仰している人、退治しようとしている人の間で争いにならなかったのでしょうか。

それは発生した可能性があります。神殺しを語る『日本書紀』のエピソードにも、これを主張する中央の官人に対し、在地の民衆たちが反対するというくだりが存在します。共同体のなかでも、度々結論をめぐってトラブルが発生していたのではないでしょうか。

狼害が祟りではなく、獣の被害だと認識されるようになるのはなぜでしょう。

動物を神霊と扱う心性が、だんだんと弱まってきたことと関連するのでしょう。熊の場合と同じく、狼も、都市と農村でイメージが異なってきます。都市では、狼は害獣以外の何ものでもありませんが、そこには、中国のもたらした書物の影響もあるでしょう。百科…

三峰神社に参詣したとき、参道で父が「帰り道に振り返ったら狼に食われてしまうよ」と云っていたのを思い出しました。「見るなの禁」は日本の黄泉国神話にも、ギリシアのオルフェウス神話にも認められますが、山もそうした他界の一種なのでしょうか。

まさに山は他界で、『万葉集』では、死者が山に帰ってゆく姿を歌ったものもあります。『古事記』の黄泉国神話は地下、あるいは洞窟のなかという印象が強いですが、イザナキが逃げてくるくだりなど、山上古墳群の参道を反映したものではないかとの説もありま…

道成寺縁起といい、化け物に変身するのは女性の方が多いように思うのですが?

道成寺縁起で清姫が変身する竜蛇は、かつては男性象徴で男が変身するものでした。世界的文脈でいうと、脱皮を繰り返すところから死と再生のシンボル、死の秘密を知っているものと考えられ、ギルガメシュ神話では主人公から不死の力を奪うもの、『旧約聖書』…

日本では、牧畜という形でなくても労働用の牛や馬がいたはずです。彼らへの狼の害はなかったのでしょうか。あったとすれば、農耕に害をなすとのイメージも生じたのでは?

講義でもお話しますが、通常の状態であれば、狼が里へ降りてきて人間や家畜を襲うことはほとんどありません。しかし近世、山林の荒廃によって餌場が失われると、両者の争いが激化してゆきます。もちろん、牛馬が被害に遭うこともあったでしょう。結果、近世…

汝に関連しての質問ですが、道教で神を使役するのも神が没落した結果なのでしょうか。

道教で同士が使役できるのは、自然界に宿る個々の精霊や疫病神、邸宅に宿る宅神など下級の鬼神です。至高神の太上老君をはじめ、天界・冥界のヒエラルヒーにおいて道士本人より位の高い神は、当然のごとくコントロールできません。ただし、祭祀を通じて祈願…

古代史や動物に関わるものなど、あまり資料がみつかりません。情報を獲得するための方法を教えてください。

人文学で文献を探す際の基本は、まずは国立情報学研究所のホームページにあるCiNiiという論文データベースか、国立国会図書館ホームページの一般図書索引・雑誌記事索引の検索です。もし最新の研究論文を読もうという気概があれば、CiNiiでキーワード検索し…

実際に使用されるテスト用紙の情報を、もう少し詳しく教えてください

1月初回の講義のときに、実物を持ってゆくつもりです。基本的に、定期テストの際に用いられるB4の表裏に横罫があるもの2枚ということです。

レポートは返却されますか。

テスト形式のものは返却しませんが、その後にレポートとして提出されたものについては、希望があればコメントを付けて返却します。かなり辛口になると思いますが、希望者は申し出て下さい。

レポートの内容は、やはり日本史が関係していないとだめでしょうか。

一応は「日本史」の講義ですので、あくまで日本史を中心に論じてください。ただし、比較対象として日本以外の地域について考察するのは構いません。