2008-11-01から1ヶ月間の記事一覧

北條です。質問ではなかったのですが、幾つか考えさせるコメントがありました。下に紹介しておきたいと思います。

1)『ナウシカ』は映画しか見たことが亡くて、「マンガ読んだ方がいいよ」と言われていたのですが、今日、その理由が分かりました。確かに問題は解決していないですね。あと、「理解できないものとしてつきあっていく」態度を、深めて考えたいと感じています…

北條です。以下の二つは、なかなか面白い質問でした。これ、場合によってはレポートの課題にするかも知れません。とりあえず下に掲示しておきます。

1)私たちが食べる前に「いただきます」というのは、「(命を)いただきます」という意味があると聞いたことがあります。そういう意味で食前/食後に使う言葉があるのは日本だけなのでしょうか?2)どうして日本は、他の国と比べて動物の擬人化が過度なのだ…

式年遷宮が20年から21年に変わったのには、何か理由があるのでしょうか。

20年の式年造替が破綻してゆくのは、内宮でいうと元亨三年(1323)、外宮でいうと正中二年(1325)のことです。恐らく、元寇から鎌倉幕府滅亡に至る社会的混乱が原因で、遷宮を支える経済的基盤が安定しなかったせいでしょう。その後、応仁の乱によるまった…

アルカイック・スマイルをあえてトトロで使っているのは、何か意図があるのでしょうか。

トトロだけではなく、宮崎駿の場合、人間の理解を超越した神霊にはそうした表現を用いているということなのでしょう。かわいいのに不気味という不思議なニュアンスは、『千と千尋』の湯屋にやってくる神々や『ポニョ』のポニョ自身にもいかんなく発揮されて…

今まで『ナウシカ』を感動的な話だと思っていましたが、今日の話を聞いてイメージが変わりました。でも、人間が自然を壊し、自分勝手にやっても、自然はまたチャンスをくれるという意味のように考え直してしまいましたが、それは先生の仰った「自然に対する甘え」なのでしょうか?

まさに、それが日本人の自然に対する代表的メンタリティーなんですね。それは、豊かな自然環境(自然の回復力が強い)とそれに適応した人々の生活史、政治や宗教の様々な複合的作用によって作られてきたものです。『もののけ姫』の公開当時、もっとも多かっ…

雅楽の楽器ショウはどのような字を書くのでしょう。先生は実際に吹いたことがありますか? また、他にはどのような楽器があるのですか?

ショウは「笙」と書きます。割合に簡単に音は出ます。他に吹きものでは、篳篥(ひちりき)、龍笛などが有名です。前者は東儀秀樹がよく吹いている短い縦笛、後者は一般的な横笛です。篳篥は吹くのが難しく、コツがあるので、顔を真っ赤にして力一杯吹いても…

木簡の難波津の歌が興味深いです。表裏で重複しているのは練習だからでしょうか。また、万葉仮名というのはひらがなのもとですか?

そうですね。漢字が固定化していないのがまた面白いところで、いろいろな表記を試していたのでしょう。万葉仮名は、その使用を通して、やまと言葉を表記する漢字の音が決まってゆき、やがてその一部や全体を用いて片仮名や平仮名が作られてゆきます。

日本人の秩序やモラルは、儒教の礼を通じて構築されていったのですか? / 古代にも身分秩序はあったと思うのですが、成り上がりのような存在に対してどのような感情が抱かれていたのでしょう。

とうぜん、神祇信仰や仏教に由来するものもあるでしょうが、儒教に基づくものが多いです。とくに近世の幕藩体制下では儒教的秩序が重視されましたので、日常生活における礼儀作法はほぼ儒教に拠っているといえるでしょう。例えば面白いのは仏壇で、仏教に由…

飛鳥宮は最終的に飛鳥寺を内包していったという見解がありますし、浄御原宮のエビノコ郭は大極殿ではないかという議論もあります。天武・持統朝に、王権の象徴性を高める努力がなされていた証拠とみていいでしょうか。

もちろんそうでしょう。天智朝の近江大津宮には、内裏の西殿に仏殿があったという記録が残されていますが、国家守護のために神祇信仰と仏教を併用しようとしていた当初、宮自体にも仏教的機能を内包させようという意図があったのかも分かりません。藤原宮で…

水による清めの重要性は分かったのですが、古墳時代などに用いられていた火の清めはどうなったのでしょう?

やはり火は危険なので、水ほど利用はされなくなってゆきます。しかし、現在まで盛行している使用例があります。いわずと知れた火葬です。火葬はアジアでは仏教者を中心に展開し、日本では、考古学的には須恵器製造業者の周辺で、文献的には飛鳥〜奈良時代の…

饗応の場が飛鳥寺西の地域に集中しているのは、大槻があった他にも、風水などによる重要性があったのではないでしょうか。

風水はともかく、飛鳥寺西に典型的に現れる山(丘)・清水・樹木がセットになっている空間が、古墳時代以来神聖な場所として重視されてきたのは確かです。現在古墳時代の祭儀として最も注目されているものに、各地域共同体の首長が担った湧水点祭祀・導水祭…

祖先信仰が樹木信仰に変わってゆく過程を詳しく知りたいです。

もちろん、すべての祖先信仰が樹木信仰になるわけではありません。あくまで飛鳥地域の個別的事例です。樹葉という名前からすると、この衣縫造の祖先は、神木(斎槻と思われる)の祭祀を担い共同体を統轄していたシャーマンだったのでしょう。斎槻はその奉祀…

中国・朝鮮・日本と同じような話が残っているのは、原型を作ったのが中国で、それが順次伝わってきたということでしょうか。日本も中国と同じ道を歩んできたのだ、という意味が隠されていそうです。

多くはそうでしょう。以前ちょっと触れた崇仏論争の話など、まさに廃仏を克服して隆盛を手に入れた中国仏教の歴史をなぞり、同じ道を辿ってきたことを示すために日本で作られたエピソードと考えられます。平安初期に編纂された日本最古の仏教説話集『日本霊…

須弥山ですが、斎槻の仏教的再現なら菩提樹を使えばいいと思うのですが。

釈迦がその樹下で悟りを開いたというインドボダイジュ(クワ科)は、中国中原の寒冷な地域ではうまく育たず、代わりに葉形が似ているボダイジュ(シナノキ科)が用いられるようになったといいます。しかし、そのいずれも古代の日本には存在しませんでした。…

槻(ケヤキ)が神木として出てきますが、なぜ槻が特別な意味を持ったのでしょう。 / 斎槻にはどのような神格が宿り、どういった祭祀が行われていたのでしょうか。 / 松には神が宿るとの話でしたが、桜ではないのですか?

きちんと論証されているわけではありませんが、ケヤキは、幹自体がどんどん分岐してゆく仮軸分岐という枝分かれをし、一本の中核的幹から枝葉が生えるという柱的な樹形ではなく、こんもりした広がりある樹形を作る。それが神の坐す場所として相応しいと認識…

貴重な映像が観られてよかったです。あのような舞を舞う人たちは、どうやって選ばれているのでしょう。神社の人たちですか?あの祭祀は一般の人はみられないのでしょうか?

江戸時代初期に編成された三方楽所(京都・天王寺・南都)の話は講義でもしましたが、これらの多くは明治初期に再編成され、その中核は宮内庁楽部として活動しています。現在関西方面に存在するのは、三方楽所の伝統を受け継ぐ春日大社の南都楽所と四天王寺…

『史記』にも剣の舞を舞いながら相手を刺そうとする場面があったように思いますが、日本もそのような影響を受けて武器を持った舞が発達したのでしょうか。 / 舞を舞ううえで剣や鈴を用いることには理由があるのでしょうか。

中国の影響は強いとは思いますが、もちろんそれだけではなく、在来系には在来系の独自の発展過程があったと思われます。弥生時代の土器や銅鐸には、すでに鳥の格好をして武器を持った人々の姿が描かれており、演舞もしくは模擬戦の様子を表現したものではな…

朝鮮半島にも集団の剣舞があるのをテレビで観ましたが、外来系/在来系と明確に分けられない可能性もあるのでしょうか。

そうですね。プリントに載せておいた外来系の度羅舞などがいい例です。これはビルマに由来するとの説もあるのですが、武器を用いた集団演舞である点から、逆に日本と交流の深かった耽羅のものではないかと推測したのです。もちろん、中国にも集団の演舞はあ…

前近代社会や民族社会においては、なぜ「人間神」という概念が持ち出される必要があったのでしょう。

神を奉祀する存在がやがて神性を帯び、それ自身神と同様に崇拝されることになるのが人間神でしょう。日本の天皇もそうですし、誤解を恐れずにいえば釈迦やイエスにも類似の痕跡をみてとることができます。宗教の原始段階においては、広く共通して見出せる事…

乙巳の変のあとにも、王殺しの思想に基づく事件やその記述は存在したのでしょうか。

どうなんでしょう。従来の日本史では、天皇制の存続を考えるとき、政治的権力は将軍に移ったが宗教的権威は天皇にあり、ゆえに日本列島においては、天皇/将軍による二元的支配が長く続いたといわれてきました。しかし近年の研究では(例えば曽根原理『神君…

王殺しが首長霊を取り去る作業なら、逆に新たな身体へ憑依させる祭儀もあったと思うのですか。

日本で最も注目されるのは〈真床襲衾(マドコオブスマ)〉と呼ばれる大嘗祭の秘儀です。秘儀ゆえに、具体的にどのようなことが行われているのか分からないのですが、ニニギが天孫降臨の際にくるまっていた敷物に体を包むことで、太子は天皇霊を憑依させ新天…

春学期の「日本史概説」では、アニミズムに基づく神殺しの問題が出てきました。生き物を殺して利用しても生命を奪ったことにはならないという発想は、樹木の場合にも適用されたのでしょうか。つまり、樹木を伐ってもその精霊は残ると考えていたのでしょうか。

そうです。樹木にも生命の根源としての精霊=樹霊が宿っていると考えられており、この樹霊を木で作る邸宅や船舶の守護神に転換する祭儀(木鎮め)や、イヲマンテと同じく精霊の世界へ送り返す祭儀(木霊送り)が、古代から連綿と受け継がれてきています。例…

神道とアニミズムは同じものですか。

厳密にいうと、現在日本で行われている神道は、中世から近世にかけて儒教や仏教の影響を受け体系的宗教としての形態を整えたものなので、アニミズム的ではなあってもアニミズムではありません。神道の原型は古代にあり、「神道」ではなく神祇信仰と呼んでい…

アニミズムは日本固有の信仰と習ったのですが、世界にも似たような宗教形態があったのですか。

もちろん日本固有ではなく、極めて普遍的に存在する最も原始的な宗教形態のひとつを指します。イギリスの人類学者ターナーが最初に使用し、以降多く使われるようになりました。講義でも説明したとおり、森羅万象のあらゆるものに人間と同じ霊魂=生命(アニ…

「俳優」をワザヲギと読むなど、古代の史料は訓み方が非常に特殊です。現代とあまりにも違うのは、漢字の読み方自体が変化してきたからでしょうか。

7〜8世紀は、古代国家の官人層を中心に漢字の受容が進み、倭の在来の言葉をどのように漢字・漢文で表記するかという試行錯誤が進んだ時代です。ゆえに、どのような言葉をどのような文字で表すかはまだまだ不安定であった、いいかえればその形成期であった…