花粉から歴史をみたり、何かを導くという着眼点に驚きました。しかし、空中を飛んでいる花粉は目にみえないので、どう検証するのか疑問に残りました。

講義でも説明しましたが、花粉分析を行うためには、低湿地に着床したものを素材とするのが最も効果的です。質問にもあるように、軽い花粉は地面に落ちてもすぐ飛散してしまうので、どこから飛んできたものなのか分からなくなってしまうのです。尾瀬沼のように、周囲を山に囲まれた低湿地なら、花粉の出所は限定されてきますし、沼底に沈潜した花粉はほとんど攪乱されません。花粉の分子構造は比較的強固で、長い時間を経ても維持されていることが多いため、これを電子顕微鏡で確認することによって植生などを復原してゆくのです。