私は、今まで古代史に興味を持ったことがありません。今回の履修をきっかけに好きになりたいのですが、古代史の魅力を教えてください。

うーん。こういう質問にズバッと答えられなければ、大学の教員として失格なんでしょうね。個人的に感じるのは、いちばん「他者性が強い」分野であるということでしょうか。時代を遡れば遡るほど、感覚や感性、思考のありようなどは現代とかけ離れてゆきます。例えば皆さんが、「神聖なものと認めている亀を、なぜ卜占に使うために殺してしまうのか」という疑問を抱くように、なぜこんなことを考えるんだろう?なぜこんなことをするんだろう?と首を傾げることがよくある。そのギャップを解き明かしてゆくこと自体も面白いですし、その過程で現代人である自分自身の認識、思考を相対化することができるのも醍醐味のひとつでしょう。また古代であるということは、そうした「他者なる領域」が私たちにとってのオリジンでもあるということになるわけで、そうしたパラドクス的な不可思議さも魅力なのだろうと思います。